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 ――おしまいへんのつづきのつづき

 「今回のことは、解ったわ。……まぁ、事態のおおよそは聞いていたし、あなたが何かをして、彼を洗脳したというのは確かだったしね」飯泉が、癖っ毛で跳ねている前髪を弄りながら、呟くように言った。「でも、まだ半分よ。あなたの保有能力の説明は、肝心なところが話されていない」言われて、七海もそれに気が付いたのだろう。視線が僕の顔に集中し、再び緊張感のある空気が漂い始める。「こんな状況だから、話して貰うわ。2人がリタイアして、久我峰さんまでダウンしてるんだから、実質的な戦力は今、たった5人。少しでも情報を密にしておきたいの。中村さんと幽全先生、それと帯沼くんにも近い内に会わせる。だから……」「安心してよ、ちゃんと話すさ。……ただ、これは……僕の急所、秘中の秘でもあるからね。少しだけ、心の準備をさせて欲しい」言って、僕は立ち上がると背筋を伸ばし、肩を回した。屋上から見る学校の景色は、慣れているはずなのにどこか懐かしくて。気が付くと、2人に背を向ける形で、ネットに指を絡めながら、薄い地平線を眺めていた。「肉島友邦と、未明のやつから、どうやって能力をコピーしたのか。それが聞きたいんだろ?」「……ええ」「2人とも既に死んでいて、その瞬間には必ず僕が立ち会ってる。選択肢は自ずと限られてるんじゃないかな」「あのなぁ、お前、俺みたいにデキの悪いヤツが混じってるのを忘れてないか? 推理とかじゃなく、確定した情報を教えて欲しいんだ、今は」「……解ってるよ。これは、何て言うか、勿体付けじゃなくてさ、……ただ、単純に言い辛いんだ。だから、……少しくらいの遠回りは、許して欲しい」「なら、私の推論を話しておくわね」飯泉が、やや気遣わしげに、それでもやはり口に出したかったのだろう。満を持して、という感じで語り始めた。「あなたは、恐らく普段のスキャン能力だけを使っても、能力の相殺ぐらいは出来ると思う。そうでなければ、久我峰さんと引き分けるなんて出来ないものね。でも、自分でそれを使いこなすためには、もっと精度の高い情報と、記憶が必要になる。たぶん、『読み込む』んじゃなくて、『取り込』まなければならないんでしょう?」その言葉に、七海はただキョトンとした反応を見せるだけ。僕は、ただ黙っている。飯泉は反応が得られなかったことに少し不満を見せつつ、続けた。「肉島友邦を尋問したとき、あなたが全ての情報を引き出した彼女の身体は、完膚無きまでに破壊されていた。でも――、アレはフェイクだったんでしょう? 身体の欠損を誤魔化すための。有賀未明……妹さんの時、あなたは彼女に火を放って、死体を焼き尽くした。……あんなに可愛がっていた彼女の身体を、無惨に壊すなんて出来ないものね。かと言って、欠けた身体をそのままにしておく事は出来ない。だから、燃やした」「……ちょっと待てよ。欠けたってことは、何か? コイツは指とか目玉とかを切り取って、自分に貼っ付けたってのか?」「違うわよ。見たでしょう? 確かに全身粉々だったけど、肉島友邦の指は揃っていた。私が回収したんだから間違いないわよ。それよりも、酷かったのは頭部の破損。銃を炸裂させたとしても、あんなに中身が飛び散ることは無いでしょうね。それだけ念入りに細工した。せざるを得なかった」飯泉は、黙って表情を変えない僕を見据えながら、こう告げた。

 「あなたは、能力を吸収する際、対象者の脳を食べなければならない」

 指を差したりはしなかったものの、その姿は様になっていて、……洗いざらい全てを話してしまいたくなるような、清潔なオーラを発していた。2時間ドラマの犯人役というのは、案外痛快な気分で演じているのかも知れない。これなら喜んで崖も背負ってしまえそうだ。そんな気持ちで薄く笑っていると、七海がドン引きした表情で、心持ち小さく震えながら、少しずつ僕との距離を取り始めていた。僕は地味に傷つきながら、一言。「……そんな目で見んな」

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